学校業務改善の事例

元高校教員の中小企業診断士認定経営コンサルタントとして、今までに携わった学校業務改善コンサルティングの事例、セミナーの事例を一部ご紹介します。(守秘義務の関係から、個別具体的な内容は伏せる形となります。御了承下さい。)

 

学校業務改善コンサルティングの事例@:分掌向け

東京都の法人(職員規模60名程度)に対して業務改善コンサルティングを行った事例です。

 

【改善対象とする分掌決定】
・教職員毎の残業実態分析
・分掌毎の残業実態分析
・分掌組織分析

 

まず、改善対象とする分掌の決定を行いました。本依頼は、まず特定分掌に絞って業務改善を行い、業務改善の効果を確認したのちに学校全体の改善を行っていきたいというものでした。最初から学校全体の業務改善を行うのは先生方の士気や実現可能性の面で問題が大きいため、この流れでの業務改善となりました。

 

上記の3つの分析を主として、改善対象とする分掌を決定しました。対象とする分掌の決定基準は、「分掌1人当たり残業時間量」「分掌内残業時間量のバラツキの大きさ」「時期による1人当たり残業時間量のバラツキ」等です。これらを総合的に分析・判断し、事実に基づき改善対象とする分掌を決定します。この段階で対象の選択を間違えると今後の改善の効果が著しく小さくなってしまうため、改善インパクトの大きい分掌選択を行うために、このステップは非常に重要となります。

 

 

次に、決定した分掌に対して以下の各種分析を行いました。

 

【各種分析の実施】
・改善対象業務の明確化:PQ分析
・対象業務の工程(フロー)洗い出し:巻紙分析
・属人化状態の把握:機能展開分析
・具体的改善の実行

 

このように、基本的に「業務内容」のページでお伝えした通りの一連の分析・改善を行いました。4点目に挙げた「機能展開分析」は当該ページで紹介していないため、追加して説明いたします。

 

機能展開分析とは、分掌内の業務の所要時間と負担度、担当教職員を一覧形式で表示することで、分掌内の属人化状態を可視化させる分析手法です。

 

 

分掌内の属人化状態の可視化「機能展開分析」

学校属人化分析

 

上図の例で言えば、業務ごとの「月当たり回数」「一回当たり時間」「他分掌との折衝」で業務の重要度を、「担当教員」で業務の属人化状態を分析します。(属人化とは、業務を担当できる先生方が1人しかおらず、業務が個人に依存している状態のことを指します)
ここで、担当教員の欄は主担当者を◎で、副担当者を〇で示しています。必然的に、◎しかついていない業務の属人化が示唆されます。

 

一方で、属人化した全ての業務を改善対象とするのは現実的ではありません。理想ではあるものの、大変お忙しい先生方が限られた時間の中で全改善活動を遂行するのは困難です。そこで、属人化していることが示唆された業務の内、先ほど分析した「重要性の高いもの」から順に優先順位を決定し、改善対象とするのです。

 

 

これら一連の分析によって、以下の問題点が把握されました。

 

【分析による問題点の把握】
・データの入力および出力で著しい時間ロスが発生している
・特定業務につき属人化が顕著に生じており、対応に時間がかかっている
・分掌会議への承認必要事項が多く、時間ロスが生じている

 

大きく、この3点が把握されました。今まで業務改善コンサルタントとして活動してきた中で、「データ入出力」「分掌内属人化」「分掌会議検討事項」この3点については問題を抱えている学校が非常に多いという印象があります。本事例も、代表的なこれらの点が問題として表出しました。

 

 

これらの問題に対して、以下のような改善策を提案・実行しました。
【問題点解消のための改善策】
・シンプルなITツール導入による入力作業の排除、出力作業の簡素化
・ペア教育による重要業務の属人化解消
・分掌会議での検討事項ルール化による、会議時間の短縮と濃密化

 

 

このような形です。学校現場は少人数の分掌単位で組織されるため、上記と同様の問題が頻発する傾向にあります。そのような場合にも、画一的な改善実行は行わず、分析により把握した事実を基に学校の実態に沿った改善策を実行することが何より重要といえます。

 

学校業務改善コンサルティングの事例A:全体向け

学校全体に向けた業務改善コンサルティングは、基本的に先ほどの事例で紹介した改善策を各分掌に横展開していく形となります。それとは別に、学校全体に向けた改善としてポピュラーなのが「会議体の改善」です。

 

特に職員会議など多数の教職員が参加する会議は、繊細な運営が求められます。
その背景として、会議体の簡単な分析手法を紹介します。

 

学校の会議体分析の手法

学校会議分析

 

上図は、学校の会議体についての分析手法です。現状どんな職層の教員が何人数参加し、どれだけ開催されているか、それは時間に換算してどれほどのコストかを分析する手法です。今回は、職員会議、分掌会議、拡大分掌会議を想定して資料を作成しております(実際のコンサルティング内容とは数値を変更しておりますのでご安心ください)。

 

職員会議の改善で重要なのは、金銭的時間コストの概念です。

 

「何時間費やしている」という分析では、実際に改善への危機感が湧きにくいため、時間を金額換算することは非常に重要です。上記の例は東京都の学校のため、参考として東京都教員の年収をベースに計算を行っております。参考にした年収は以下の通りです。

 

・大卒初任給の年収: 248,760×16=約398万円
・31歳主任教諭の年収:341,489×16= 約546万円
・33歳主幹教諭の年収:385,784円×16= 約617万円
・39歳副校長の年収:573,510円×15=約860万円
・43歳校長の年収:657,163円×15=約986万円

 

それぞれの職層を上記の年収分稼いでいると想定し、計算を行いました。これを時給ベースに換算し、会議時間をかけ全員分足し合わせたものが「時間コスト」の欄になります。
なお、上記の年収計算については、当方のブログで詳しく説明しておりますので、合わせて参考にして頂ければと思います。
東京都の教員の給与と年収を解説【詳細版】
東京都の教員の給与と年収を解説【概要版】

 

 

例えば上記の分析より、職員会議では1回あたりおよそ26万円の価値を消費していることが示唆されます。

 

これほどの時間的コストを消費しているわけですから、1分たりとも1人たりともムダな消費をすることはできないのです。しかしこれは、「ムダなく全ての内容を伝える」ことや「全ての教職員に発言させる」ようなことを目指すわけではありません。むしろ志向するのはその逆で、「ムダな内容は会議内容から除外すること」「参加対象を再度検討すること」こそが改善の方向性となります。
本事例では、職員会議における検討事項のルール化、発言・共有方式のルール化、参加者の再検討を行い、1か月あたりコストを有意に減少することができました。

 

職員会議は、減らせばよいというものではありません。昨今様々な意見がありますが、個人的に職員会議は絶対に必要だと思っております。だからこそ、ムダなく遂行されるよう、詳細な分析から把握した事実に基づく改善を実行すべきなのです。

 

 

 

学校業務改善セミナーの事例@:教員向け

本事例は、学校の先生方に向けた業務効率化のセミナーに関するものです。

 

【セミナー概要】
・セミナー目的:先生方が業務改善の知見と実践力を得られるような情報を提供する
・セミナー規模:30名程度
・セミナー時間:1時間程度

 

本セミナーは、学校の先生方向けに業務改善に関するセミナーを行って欲しいというご依頼を受け実施いたしました。

 

学校改善セミナーのスライド例

学校改善セミナー

(一部実際に使用したスライドを含みますので、ぼかしを入れております。ご容赦下さい。)

 

内容としましては、
業務改善の必要性の説明→業務改善を行う上での手法の説明→業務改善手法の実践→改善事例の紹介
このような流れで行いました。業務改善の必要性の部分では、日本が抱える学校現場の残業問題や残業時間を金銭換算した際のロス、過労死ラインとの関係などをお伝えしました。業務改善手法については、「業務内容」で御紹介した業務改善コンサルティングの手法を噛み砕いて詳しくお伝えしたような形です。

 

学校の先生方という事もあり、非常に真剣に受講されているという姿勢がこちらにも伝わってきて、非常に有意義な時間となりました。

 

以下、アンケートの中で頂いたご感想の一部となります。

教員の経験に基づく具体例を随所に入れながら説明していただいたので、非常にわかりやすく、また納得感がありました。是非いくつかの改善手法を試してみたいと思います。

(50代男性)

なぜ改善できないのかに気づけた。がむしゃらに取り組むだけでは変わらないことが分かった。大変丁寧かつこの世界にいたらまず聞くことができない内容である。このセミナーに参加するとしないとでは明日からの仕事も変わるであろう。講師がかつて同じ職種であることも安心できるポイント。機会があればまた参加したい。(40代男性)
業務効率化はやりたくてもできないことも多い中で、効果的に順序だててできる方法を分かりやすく教えて下さいました。一時間ではもったいないです。(40代男性)

 

 

学校業務改善セミナーの事例A:職員向け

本事例は、学校の事務職員の方々に向けた生産性向上のセミナーに関する物です。

 

【セミナー概要】
・セミナー目的:学校の職員の方に、生産性向上を図るための素養定着や知識を提供する
・セミナー規模:150名程度
・セミナー時間:2時間程度

 

本セミナーは、学校の事務職員の方向けに生産性向上に関するセミナーを行って欲しいというご依頼を受け実施いたしました。

 

事務職員の生産性向上セミナーのスライド例

学校改善セミナー


(一部実際に使用したスライドを含みますので、ぼかしを入れております。ご容赦下さい。)

 

内容としましては、
生産性の定義と現状→学校職員の生産性向上の方向性→生産性向上へ向けた手法→手法の実践→改善事例の紹介
このような流れで行いました。生産性とは、インプットに対するアウトプットの割合のことを指します。例えば、少ない時間や人数で、多くの結果を出すことができれば、生産性が高い状態だという事ができます。日本の生産性はOECD加盟国の中でも40年前から20位前後を推移しており、決して高い状態ではないといわれています。そのような中、一般企業や工場を中心に生産性の向上が叫ばれています。

 

生産性向上が必要とされるのは、学校事務職員も同じです。

 

昨今、学校の業務改善が注目されていますが、その対象は学校教員に向けられることが殆どです。もちろん、学校教員はいわゆるブラックと言われるような過酷な状態での労働という現状があるからですが、教員と同じく事務職員の生産性向上も重要だと認識しております。

 

本セミナーを通して、多くの事務職員の方に生産性向上、業務改善に関する知識や実践をお伝えすることができ、有意義なセミナーとすることができました。

 

 

トップへ戻る